静岡大学 グリーン科学技術研究所
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研究内容
付加体の深部帯水層におけるメタン生成および窒素ガス生成メカニズムの解明

 静岡県中西部から愛知県南部、紀伊半島南部、四国南部、九州南部、そして、沖縄地方にかけての太平洋側の地域は、付加体と呼ばれる厚い堆積層からできています。付加体は、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に海洋プレート上の海底堆積物が大陸プレートの側面に付加し、その後、隆起してできた地層です。付加体は海底堆積物に由来しており、そこには高濃度の有機物が含まれています。また、付加体の深部帯水層には地熱によって温められた地下温水と大量の付随ガス(主に、メタン)が含まれています。
 我々は、付加体が分布する地域に構築された温泉施設を巡り、温泉用掘削井(深度1,000〜1,500mのものが多い)から地下温水(温泉)および付随ガスを採取しています。そして、地下温水の環境データ測定、各種イオン濃度分析、水の安定同位体比分析、付随ガスのガス組成分析、メタンの炭素安定同位体比分析を行っています。さらに、地下温水に含まれる微生物群集を対象とした嫌気培養、16S rRNA遺伝子・機能遺伝子の解析、補酵素の検出・定量も実施しています。そして、付加体の深部帯水層での微生物生態、有機物分解やメタン生成といった炭素循環、脱窒による窒素ガス生成といった窒素循環について研究を進めています。

学術論文
・Microbes and Environments 33: 205-213 (Abstract)
・Microbes and Environments 31: 328-338 (Abstract)
・Analytical Chemistry 86: 3633-3638 (Abstract)
・ISME Journal 4: 531-541 (Abstract)

 
    
 
付加体の深部帯水層の付随ガス、地下温水、微生物群集を有効利用した分散型エネルギー生産システムの開発

 西南日本の太平洋側の地域は付加体と呼ばれる厚い堆積層からできています。付加体は、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に海洋プレート上の海底堆積物が大陸プレートの側面に付加し、その後、隆起してできた地層です。付加体は海底堆積物に由来することもあり、高濃度の有機物が含まれています。また、付加体の深部帯水層には有機物を分解して水素ガスと二酸化炭素を生成する水素発生型発酵細菌と水素ガスと二酸化炭素からメタンを生成する水素資化性メタン生成菌が生息することを明らかにしてきました。
 現在、我々は付加体の深部帯水層から地下温水と付随ガス(主に、メタン)を採取するための温泉用掘削井(深度1,000〜1,500mのものが多い)とメタン分離槽、ガスホルダー、コージェネレーション(ガスエンジン発電機)を備えた“温泉メタンガス発電システム”の構築を進めています。そして、静岡県内では川根温泉(島田市川根町)にて実用化させました。さらに、温泉用掘削井から採取した嫌気性の地下温水とそこに含まれる微生物群集を利用したメタン生成リアクターおよび水素ガス生成リアクターの開発も進めています。
 本システムは、水・ガス・電気・熱を自家的に供給することができます。一方、付加体の分布域は、東海・東南海・南海地震の被害想定区域にも指定されています。そこで、巨大地震や大規模な洪水といった災害時にインフラを自家的に供給する“防災ステーション”として高度利用することも計画しています。

学術論文/特許
・Microbial Biotechnology 8: 837-845 (Abstract)
・特許第6453386号
・特願2018-037195
・PCT/JP2019/007354

 
  
 
原核生物の16S rRNAのG+C含量と生育温度の関係に着目した微生物生態学および応用研究

 リボソームRNA(rRNA)遺伝子は、原核生物をはじめ全生物の系統解析に広く用いられています。一方、原核生物の16S rRNA遺伝子のグアニン(G)とシトシン(C)の割合(G+C含量)は、原核生物の生育温度と非常に高い相関を示します。つまり、高温環境に生息する好熱菌や超好熱菌は高いG+C含量の16S rRNA遺伝子を有しており、低温および中温環境に生息する好冷菌や中温菌は低いG+C含量の16S rRNA遺伝子を有します。
 我々は、原核生物の16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定したのち、そのG+C含量をもとに原核生物の生育温度を推定するための新たな研究手法“微生物分子温度計”を開発しました。微生物分子温度計は、16S rRNA遺伝子のG+C含量から環境微生物や難培養性微生物の最低生育温度、至適生育温度、最高生育温度を推定するためのツールです。さらに、培養法に依存せずに微生物を好冷菌、中温菌、好熱菌、超好熱菌に分類することも可能です。現在、地下圏微生物の16S rRNA及び16S rRNA遺伝子の塩基配列から地下の温度を測定する手法の開発に取り組んでいます。将来的には、地下圏微生物の16S rRNAのG+C含量から深部地下圏の温度環境および地下生物圏の限界深度を明らかにしたいと考えています。また、地質学、地震学、地球化学などの分野において重要となる地下の温度データの収集に貢献したいと考えています。
 一方、砂漠の塩湖に生息する好塩性アーキア(特に、Haloarcula)は、ゲノム上に2〜3コピーの16S rRNA遺伝子を有しています。これらの16S rRNA遺伝子の塩基配列は異なり、また、これらのG+C含量は1-3%異なります。これまで、ゲノム上にG+C含量の異なる複数種の16S rRNA遺伝子を有することの重要性については明らかにされてきませんでした。そこで、原核生物の生育温度と16S rRNA遺伝子のG+C含量の関係に着目し“これらの好塩性アーキアは高温時にG+C含量の高い16S rRNAを含むリボソームを機能させて増殖する”という仮説を立て、検証しました。その結果、最高生育温度に近い高温での培養において、高いG+C含量の16S rRNAを多く発現することが示されました。昼間に50℃を超えることもある砂漠の塩湖や塩田から単離されたこれらの好塩性アーキアは、G+C含量の高い16S rRNAを利用して高温環境に適応している可能性があります。

学術文献
・Antonie van Leeuwenhoek 112: 112-201 (Abstract)
・Frontiers in Microbiology 8: 482 (Abstract)
・Environmental Microbiology Reports 5: 468-474 (Abstract)
・Applied and Environmental Microbiology 73: 2110-2117 (Abstract)

 
   
 

研究設備
嫌気培養装置
ガス分析装置
好気培養装置
DNA・RNA解析装置
 
落射型蛍光顕微鏡・撮影装置